こんにちは、畑岡です。
前回は日産セレナという実用的なミニバンについてお話ししました。今回は、私の車遍歴の中でも特別な「再会」となった、2度目のフェラーリF430F1について綴りたいと思います。
消えない情熱
10年前に初めて所有したフェラーリF430。経済的な理由で手放したものの、その印象的なドライブフィールは私の心に深く刻まれ、その後もずっと忘れることができませんでした。そして2016年、事業も再び安定軌道に乗り、「もう一度あの感覚を味わいたい」という強い思いが湧き上がってきました。
人生で何度も同じモデルの車を購入することは珍しいかもしれません。しかし、F430に関しては「いつか必ずまた乗りたい」という思いが常にあり、機会を探していたのです。
運命的な出会い
神戸のフェラーリディーラーで見つけたのは、ロッソ・スクーデリア(フェラーリの伝統的な赤)の外装に、ベージュの内装というクラシックな組み合わせのF430でした。この色合いを見た瞬間、私は自宅に飾っていた1/43スケールのミニカーと全く同じ仕様であることに気づきました。
「これは単なる偶然ではない」
そんな運命的なものを感じ、即座に購入を決意しました。中古車ではありましたが、状態は極めて良好で、前オーナーの大切な管理が感じられる一台でした。
700キロの帰還
納車日、私は思い切って神戸から熊本までの約700キロを、その足で走行することにしました。天候に恵まれたその日、瀬戸内海沿岸の美しい景色を眺めながらの長距離ドライブは、F430との再会を祝う特別な旅となりました。
高速道路に乗り、アクセルを踏み込んだ瞬間、10年の歳月が一気に溶けていくような感覚がありました。エンジンの官能的なサウンド、アクセルレスポンスの鋭さ、ステアリングの繊細な感触。すべてが記憶通りでありながら、改めてその素晴らしさに感動したのです。
特に印象的だったのは、九州自動車道の山間部でのドライビングでした。適度なカーブが続く区間で、F430のハンドリングの正確さと、ミッドシップレイアウトがもたらす優れたバランス感覚を存分に堪能しました。
途中、何度かサービスエリアで休憩しましたが、その都度車を振り返っては「また所有できた」という幸福感に浸りました。長距離運転にもかかわらず疲労感は少なく、むしろ到着が近づくにつれて寂しさすら感じるほどでした。
若き日の感動を再び
再びF430のステアリングを握った感動は、10年前に初めて手にした時のそれに勝るとも劣らないものでした。特に印象的だったのは、時間が経っても、このクルマの持つ特別な魅力がまったく色褪せていなかったことです。
4.3リッターV8エンジンの心地よい鼓動、8000回転を超える高回転域までリニアに伸びていく加速感、そしてなによりエンジンが奏でる音楽のようなサウンド。これらの要素が組み合わさることで生まれる体験は、他のどんな車でも代替できないものでした。
週に2回はドライブに出かけるほどにお気に入りとなり、休日の早朝にはわざわざエンジン音を楽しむためだけに、人の少ない山道へと向かうこともありました。カスタムされた排気系を持つスポーツカーも多い昨今ですが、F430の標準エキゾーストが奏でる純正サウンドは、決して大音量ではないものの、その質の高さと音色の美しさにおいて比類のないものだと感じます。
変化と不変
10年の歳月を経て私自身は変わりましたが、F430への愛情は変わりませんでした。しかし、車との付き合い方には微妙な変化がありました。
若いころは「速さ」や「性能」に価値を見出していましたが、今回のF430との時間では、より「感覚的な喜び」や「所有する満足感」に重きを置くようになっていました。極限まで攻めるサーキット走行よりも、心地よいペースでのワインディングドライブを好むようになっていたのです。
また、今回はF430の「デザイン美」にも改めて魅了されました。ピニンファリーナによるそのデザインは、10年以上経った今見ても色あせることなく、むしろクラシックカーへと熟成していく過程のような味わいを感じさせるものでした。特に後ろ姿のエンジンルームを覗けるガラスハッチと、その下に配置された排気管のデザインは、機能美と造形美が見事に融合した傑作だと思います。
共有する喜び
今回のF430所有で特に楽しかったのは、友人や家族とその喜びを共有できたことです。「またフェラーリを買ったの?」と驚かれることも多かったですが、試乗させた友人が興奮した表情を見せる瞬間や、助手席に乗せた家族が思わず笑顔になる瞬間が、何物にも代えがたい喜びでした。
ある休日には、かつての同僚数人をドライブに誘い、山間の温泉地まで足を延ばしました。道中でハンドルを交代しながらの企画でしたが、全員がF430の虜になったようで、「スーパーカーに乗る喜び」を分かち合えたことは、車好きとしての幸せな時間でした。
また、地元の子供向けイベントでは、F430を展示する機会もありました。子供たちの目が輝く様子や、「将来はこんな車に乗りたい」という声を聞くと、自分自身の子供時代の夢が形になった喜びを改めて実感したものです。
おわりに
2度目のF430との時間は、約1年と短いものでしたが、私の車遍歴の中でも特別な位置を占めています。それは単に「再会」の喜びだけでなく、10年という時を経ても変わらぬ感動を与えてくれたという意味で、このクルマの本質的な価値を証明するものでした。
車との関係は時に人生を映す鏡のようなものです。苦難の時期を経て再び憧れの車を手にする過程は、ある意味で私自身の再生と成長の物語でもありました。
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