私と車の物語:FERRARI 488GTB(2017-2023)

488GTB

こんにちは、畑岡です。

前回は日産セレナe-powerという実用的なミニバンについてお話ししました。今回は、私の車遍歴において最も長く、そして最も特別な思い出を持つ一台、フェラーリ488GTBについて綴りたいと思います。

夢の新車フェラーリ

7年間の付き合いとなった488GTB

2017年、私にとって人生初となる新車フェラーリのオーダーを決断しました。これまで中古車でフェラーリを購入してきましたが、自分好みの仕様にカスタマイズできる醍醐味を味わいたいという思いが強くなっていたのです。

オーダーシートを前に、様々な選択肢を吟味する時間は、それだけでも大きな喜びでした。外装色はフェラーリの伝統的な赤であるロッソコルサを選択。内装には温かみのあるブラウンレザー(クオイオ)を指定し、ステッチには鮮やかなイエロー(ジャッロ)を選んで差し色としました。細部まで自分の好みを反映させられる喜びは、既製品の購入では決して味わえないものでした。

注文から納車まで約1年。その間、ディーラーから送られてくる製造工程の写真や進捗報告に一喜一憂する日々を過ごしました。そしてついに迎えた納車の日。カバーが取り外され、自分仕様の488GTBが姿を現した瞬間の感動は、今でも鮮明に記憶に残っています。

圧倒的なパフォーマンス

488GTBに搭載された3.9リッターV8ツインターボエンジンは、最高出力670馬力という驚異的なパワーを発揮します。以前所有していたF430と比較すると、約180馬力もの大幅なパワーアップ。最初にアクセルを踏み込んだ時の加速感は、「これは公道で全開にできるものではない」と思わせるほどの衝撃的なものでした。

0-100km/h加速は公称値で3秒とされていますが、実際に体感するとその数字以上の迫力があります。特に中間加速の鋭さは圧巻で、高速道路での追い越しなどではほんの一瞬でスピードメーターの針が跳ね上がります。そのあまりの速さに、同乗者が思わず悲鳴を上げることも少なくありませんでした。

ターボサウンドの魅力

488GTBの後ろ姿が一番のお気に入り

488GTBは、フェラーリが長く守ってきた自然吸気エンジンからターボエンジンへと移行した転換点にあるモデルです。発表当初は「ターボ化によってフェラーリ特有の官能的なエンジンサウンドが失われるのでは」という懸念の声もありました。

しかし、実際に所有して感じたのは、その心配が杞憂に過ぎなかったということです。確かにF430のような高回転まで伸びていく甲高いサウンドとは異なりますが、488GTBは低音域

の厚みとターボ特有の迫力あるサウンドで、別の形の官能性を獲得していました。特にトンネル内での加速時に聞こえるエキゾーストノートは、何度聞いても飽きることのない音楽のようでした。

エンジン音だけでなく、ターボのスプールアップする音や、シフトチェンジ時のバックファイヤーの音も、488GTBならではの新たな魅力となっていました。最初は「違う」と感じた音が、やがて「新しい魅力」へと変わっていく過程も、長期所有ならではの発見でした。

格段に向上した内装品質

488GTBで特に印象的だったのは、内装の質感が大幅に向上していたことです。F430の時代と比較すると、使用される素材の質、フィット感、細部の作り込みなど、あらゆる面で数段のレベルアップが感じられました。

特にクオイオレザーで仕上げられたシートは、まるで高級ソファに腰掛けているかのような快適さ。長時間のドライブでも疲労感が少なく、実用性の面でも大きな進化を遂げていました。ステアリングホイールやダッシュボード、ドアトリムなどの各部にも手触りの良いレザーが贅沢に使用され、室内全体が特別な空間として演出されていました。

また、インフォテインメントシステムも使いやすく進化し、スマートフォンとの連携も容易になっていました。スーパーカーでありながら、日常使いの面での配慮も感じられる設計は、フェラーリの新たな一面を見せてくれました。

7年間の愛車生活

別荘の前で。手前から488GTB、Huracan LP610-4、CaymanGT4

この488GTBとの付き合いは、驚くことに7年間という長きにわたりました。これまでの私の車遍歴では珍しく長い所有期間となりましたが、それだけ飽きることのない魅力を持った車だったということでしょう。

週末を中心に乗り続け、累計走行距離は約3万キロメートル。決して日常使いのメイン車ではありませんでしたが、週末や特別な日のドライブを彩る特別な存在として、常に大切にしてきました。

メンテナンスは徹底的に行い、定期点検はもちろんのこと、使用頻度が少ない時期でもバッテリー管理には特に気を配りました。その甲斐あって、7年間を通じてバッテリー上がりなどのトラブルは一度も経験せず、その他の機械的な問題も皆無でした。イタリア車に対する「壊れやすい」というステレオタイプを覆すほどの信頼性は、現代のフェラーリの進化を物語っていると思います。

思い出のドライブ

488GTBでの7年間には、数えきれないほどの素晴らしい思い出があります。特に印象的だったのは、東京から福井までの往復1000キロを超える旅でした。北陸自動車道の海岸線に沿った区間では、日本海の絶景を眺めながらのドライブを堪能。高性能スポーツカーでのロングドライブは、単なる「移動」を超えた特別な体験として心に刻まれています。

また、富士スピードウェイでのサーキット走行会に参加した経験も忘れられません。公道では決して味わえない488GTBの真のポテンシャルを体感できる機会であり、安全な環境で限界に近い走りを楽しめたことは、オーナーとしての大きな喜びでした。

日常的な使用でも、朝早くに人の少ない峠道を走ったり、夜の高速道路を静かに流したりと、この車ならではの楽しみ方を見つけることができました。それらすべての経験が、私とこの車との絆を深めていったのだと思います。

惜しまれる別れ

2023年、会社の業績が思わしくなくなり、泣く泣く488GTBとの別れを決断することになりました。7年という長い時間を共に過ごしたこの車は、単なる「所有物」を超えた特別な存在になっていました。

最後のドライブは、思い出の詰まった場所を巡るような旅となりました。お気に入りの峠道、何度も訪れた海沿いの道、そして初めてこの車で訪れた温泉地。それぞれの場所で車を止め、これまでの思い出を振り返りながら、静かに別れを告げました。

ディーラーに車を引き渡す日、エンジンを最後に切る瞬間は、本当に寂しいものでした。しかし同時に、この7年間という特別な時間への感謝の気持ちも湧き上がってきました。

おわりに

フェラーリ488GTBとの7年間は、私の車遍歴の中でも最も充実した時間でした。新車でオーダーするという特別な体験から始まり、長期にわたる所有を通じて、この車の魅力を隅々まで味わうことができました。

スーパーカーは単なるステータスシンボルではなく、所有する人に特別な体験と感動を与えてくれる存在です。時にはその維持に苦労することもありますが、それを上回る豊かな時間を提供してくれるのも事実です。

この車との日々は、私の人生における大切な一章として、いつまでも心に残り続けることでしょう。今はもう手元にはありませんが、いつか機会があれば、また同じような特別な車との時間を持ちたいと思っています。


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