
こんにちは、畑岡です。
前回はランボルギーニ・ウラカンという刺激的なスーパーカーについてお話ししました。今回は、私の車遍歴においてやや偶然的な出会いから始まった、マクラーレン540Cについて綴りたいと思います。
予期せぬ出会い
2020年のある日、マリーナで開催されていたマクラーレンの展示会に足を運ぶ機会がありました。単なる興味本位で訪れたこの展示会で、一人のマクラーレンの営業担当者と知り合うことになります。スーパーカーブランドの営業マンとの何気ない会話が、思わぬ展開へと繋がっていくとは、その時は想像もしていませんでした。
後日、その営業担当者が退社されるということで、後任の方とご挨拶をする機会がありました。その新しい担当者の方の営業スタイルが非常に誠実で、話していて心地よい印象を受けました。そんな中、彼から540Cの中古車について、驚くほど魅力的な価格の提案をいただいたのです。
通常ならば手が届かないと思っていたマクラーレンが、突然現実的な選択肢として目の前に現れた瞬間でした。これが私にとって初めてのマクラーレン所有への扉を開くことになったのです。
個性を加える
購入したマクラーレン540Cはホワイトの車体でした。美しいデザインではありましたが、私の車遍歴の中での色の取り合わせを考え、オレンジにラッピングすることにしました。フェラーリの赤、ポルシェの黄色、ランボルギーニの橙に続き、マクラーレンはより鮮やかなオレンジとすることで、自分だけの個性的なコレクションにしたかったのです。
ラッピング後の鮮やかなオレンジの540Cは、道行く人々の視線を集める存在となりました。特に印象的だったのは、上に跳ね上がる独特のドアデザイン(ディヘドラルドア)です。このドアが開く様子は非常に特徴的で、実際の価格以上に高価な印象を与えるようでした。子供たちが特に反応を示し、ドアが開く瞬間に歓声を上げることが多かったのは、微笑ましい思い出です。
レーシングDNAを感じる走り
マクラーレン540Cに初めて乗った印象は、「これは公道を走ることができるレーシングカーだ」というものでした。シャシーのカーボンファイバー構造や、軽量化へのこだわりなど、至るところにレースでの勝利を目指すマクラーレンのDNAが感じられました。
3.8リッターV8ツインターボエンジンは540馬力を発揮し、わずか1.3トン強という軽量ボディとの組み合わせにより、圧倒的な加速性能を生み出していました。0-100km/h加速はわずか3.5秒ほどと、スーパーカーと呼ぶにふさわしい性能でありながら、驚くべきことにその操縦性の高さは初心者でも扱いやすい特性を持っていました。
特にステアリングフィールは秀逸で、路面からの情報が豊富に伝わってくるダイレクト感がありながらも、過度に重くはなく、長距離ドライブでも疲労を感じさせませんでした。その精密な操舵感覚は、まさに「人馬一体」という言葉がぴったりの体験でした。
新たなコミュニティとの出会い
マクラーレンのオーナーになって特に印象的だったのは、ディーラー主催の走行会の雰囲気の良さでした。他のスーパーカーブランドにも同様のイベントはありましたが、マクラーレンのそれは特にアットホームで、初心者に対しても温かく迎え入れる空気感がありました。
この走行会が、私がサーキット走行に興味を持つきっかけになりました。それまでは公道での走行を中心としてきましたが、マクラーレンという車の潜在能力の高さを知ると、その真価を発揮できるサーキットでの走行に自然と惹かれていったのです。
サーキットという制約の少ない環境で、マクラーレン540Cのポテンシャルを引き出していく過程は、新たな学びと喜びに満ちていました。ブレーキングポイントの見極め方や、コーナリングラインの取り方など、車との対話を通じて少しずつ上達していく感覚は、新たな趣味としての深みを持っていました。
驚きの転売体験
マクラーレン540Cとの生活は約1年間続き、その間に約5000キロメートルを走行しました。当初は長く付き合っていくつもりでしたが、他の車種への興味も湧き、売却を考えることになりました。
そして驚いたことに、購入時とほぼ同じ価格で売却することができたのです。これは私の車遍歴の中でも極めて珍しい経験でした。通常、新車はもちろん中古車でも、一定期間の使用と走行距離の増加によって価値は下がるものです。しかしマクラーレン540Cの場合、限定的な生産台数と市場での人気が価格を下支えしていたようです。
購入時は「思い切って買ってみた」という部分もありましたが、結果として非常に良い経験ができたと感じています。車を楽しみながら、経済的な負担も最小限に抑えられたというのは、まさに「理想的な車との付き合い方」だったのではないでしょうか。
新たな視野の広がり
マクラーレン540Cとの1年間は、私の車遍歴に新たな視点をもたらしてくれました。それまではフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニという「スーパーカー御三家」を中心に考えていた私にとって、比較的新しいブランドであるマクラーレンは新鮮な風をもたらしてくれました。
特に印象的だったのは、その最新技術へのこだわりです。比較的歴史の浅いブランドであるがゆえに、伝統に縛られることなく先進的な設計や材料を積極的に採用している姿勢は、私に「スーパーカーの新しい形」を見せてくれました。
また、同時期に所有していた他のスーパーカーとの個性の違いも興味深いものでした。フェラーリの情熱的な官能性、ランボルギーニの挑戦的な刺激、ポルシェの精密な機械美に対し、マクラーレンは「洗練された先進性」という独自の個性を持っていました。その特性は街中での日常使用にも適しており、スーパーカーでありながら比較的実用的な一面も持ち合わせていたのです。
おわりに
マクラーレン540Cとの出会いは偶然から始まりましたが、その1年間は私の車遍歴において価値ある経験となりました。特にサーキット走行という新たな世界への扉を開いてくれたことは、その後の私の車との付き合い方にも大きな影響を与えています。
車との関係は時に予期せぬ展開をもたらします。マクラーレンとの経験は、「計画的に選ぶ」ことと同じくらい「巡り合わせを大切にする」ことの価値を教えてくれました。そして何より、車との出会いはその車自体だけでなく、そこから広がる人間関係や新たな経験の可能性を秘めているということを実感させてくれました。
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