私と車の物語:PORSCHE 911TURBO Type996(2006-2007)

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ポルシェ996ターボ

こんにちは、畑岡です。

前回はスバル・レガシィという実用的ながらも走りを楽しめる車についてお話ししました。今回は私の車遍歴において最も情熱を注いだ車の一つ、念願のポルシェ911ターボ(996型)について綴りたいと思います。

夢の「ターボ」を手にして

ポルシェ996ターボ

2006年、私にとって人生3台目のポルシェとなる996型911ターボを手に入れました。以前は通常のカレラモデルを所有していましたが、若い頃から憧れていた「ターボ」バッジを持つ911のオーナーになれたことは、自動車愛好家としての大きな喜びでした。

ポルシェ911ターボと言えば、1970年代後半のスーパーカーブームを象徴する存在でした。当時の930型ターボは「ヴィドヴメーカー(未亡人製造機)」とも呼ばれ、その強烈なパワーと挑戦的なハンドリングで、多くの少年たちの心を掴みました。私も例外ではなく、子供の頃に見た雑誌の写真や、街で見かけた実車の姿に心を奪われた一人でした。

そんな憧れの車を、約30年の時を経て自分のものにできたことは、一つの人生の到達点のようにも感じられました。

圧倒的な存在感

この996ターボは、新車のまま1年間倉庫に眠っていた個体

996型911ターボは、ノーマルの911カレラとは明確に異なる風格を持っていました。最も目を引くのは専用デザインのターボホイールと、大幅に張り出したリアフェンダーです。空気を取り込むためのサイドエアインテークや、大型のリアウイングも相まって、停車していてもその存在感は圧倒的でした。

特に後ろ姿は迫力満点で、道を譲ってもらった車のドライバーが、バックミラー越しに見送る姿をしばしば目にしました。この独特のワイドボディは、単なるデザイン上の特徴ではなく、強大なパワーを地面に伝えるためのワイドトレッド(タイヤの幅)を確保するための機能的な要素でもあります。そんな「形は機能に従う」という設計哲学が随所に感じられる点も、ポルシェの魅力の一つでした。

日常と非日常を繋ぐ存在

3.6リッターの水平対向6気筒ツインターボエンジンは、最高出力420馬力を発揮します。0-100km/h加速は4秒を切るという、今でも十分すぎるほどの性能です。しかし、このモンスターマシンの真価は、単純な数値だけではありません。

驚くべきはその汎用性の高さでした。平日の通勤では落ち着いた走りで渋滞にも対応し、週末には箱根ターンパイクのようなワインディングロードで全開走行を楽しむこともできまし

た。長距離ドライブでの快適性も高く、何度か計画した旅行ではその走行性能の高さを存分に堪能することができました。

特に印象的だったのは、高速道路の合流や追い越しの際の余裕です。アクセルを踏み込むと、ブーストメーターの針が振れ、背中をグッと押し出すような加速感。それでいて車体は驚くほど安定しており、高速走行時の安心感は他の車では味わえないものでした。

五感を満たす贅沢

911ターボの魅力は、走行性能だけではありません。オプション装備のBOSEサウンドシステムの音質には驚かされました。特にクラシック音楽の再生能力が素晴らしく、バッハのトッカータとフーガニ短調のようなパイプオルガンの曲を大音量で流しながらのドライブは、まさに至福のひとときでした。

エンジン音とクラシック音楽が織りなすハーモニーは、この車ならではの贅沢な体験でした。閉鎖的な空間でありながらも、音楽とドライブによって広がる世界観は、日常の喧騒を忘れさせてくれました。

また、室内のレザーの香りや触感、精密なスイッチ類の操作感など、五感全てを満足させる作りこみの丁寧さも印象的でした。これらの要素が組み合わさることで、「単なる移動手段」を超えた特別な体験を提供してくれたのです。

ポルシェという哲学

996型911ターボとの日々は、ポルシェという自動車メーカーの哲学を深く理解する機会でもありました。初代911から続く基本レイアウトを維持しながらも、時代に合わせて進化を続けるその姿勢。一見すると非合理的にも思える「リアエンジン」という配置を極限まで洗練させ、独自の魅力に昇華させる執念。

また、「必要なものを必要なだけ」という設計思想も印象的でした。インテリアはシンプルながらも必要な情報はすべて的確に伝えてくれますし、操作系も余計な複雑さを排除し、運転に集中できるレイアウトになっています。

これらの特性は、単なる「速い車」を超えた、一つの文化や哲学として、ポルシェの独自性を形作っているのだと感じました。

ターボとボクスターのツーショット

惜しまれる別れ

約1年間の所有期間は、あっという間に過ぎていきました。最終的にこの911ターボと別れることになったのは、住環境の変化により車庫が確保できなくなったためです。これほど特別な車を路上駐車することはできないと判断し、次のオーナーへとバトンタッチすることになりました。

売却の決断は辛いものでしたが、この車との時間は私にとってかけがえのない財産となりました。何より、「いつかはポルシェ」という夢を超えて、「いつかはポルシェターボ」という高みにまで到達できたことは、自動車愛好家としての大きな満足感をもたらしてくれました。

そして何より、この車によってポルシェというブランドへの愛着が一層深まったことは、その後の私の車選びにも大きな影響を与えています。

おわりに

996型911ターボとの日々は、まさに夢の実現でした。子供の頃に憧れた車を実際に所有し、その魅力を存分に堪能できたことは、一人の自動車愛好家として最高の贅沢だったと思います。

この車を手放して以降も、私のポルシェへの思いは消えることなく、むしろ「いつかまた所有したい」という新たな夢として、私の中に生き続けています。真に素晴らしい車とは、所有していない時でさえも、オーナーに夢と希望を与え続けるものなのかもしれません。


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