私と車の物語:TOYOTA VITZ(1999-2003)

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トヨタ・ヴィッツ(初代)

こんにちは、畑岡です。

前回はスポーツカーとしての魅力に溢れたマツダ・ロードスターについてお話ししました。今回は一転して、実用性を重視した私の足となったトヨタ・ヴィッツについて綴りたいと思います。

新世代コンパクトカーとの出会い

実用性を重視した私の足となったトヨタ・ヴィッツ

1999年、日本の自動車市場は大きな変革期を迎えていました。従来の「軽自動車か普通車か」という二択から、その中間に位置する「コンパクトカー」という新しいカテゴリーが確立されつつあった時代です。そんな中でデビューしたトヨタ・ヴィッツは、当時としては画期的なコンセプトとデザインで多くの注目を集めていました。

私がヴィッツを選んだ最大の理由は、そのスタイリッシュなデザインでした。当時のコンパクトカーとしては珍しく「おしゃれ」という形容詞がぴったりくる外観は、ギリシャ人デザイナーのソティリス・コヴォス氏によるものだったと記憶しています。丸みを帯びたフォルムと大きめのヘッドライト、コンパクトでありながらも存在感のあるボディラインは、都会的なセンスを感じさせるものでした。

思い切りのカラーチョイス

ボディーカラーは、当時ラインナップにあった薄いピンクのメタリック

私はかなり迷った末に、当時ラインナップにあった薄いピンクのメタリック(正式名称はピンクマイカメタリック)を選びました。実用車でありながらも、少し冒険したい気持ちがあったのでしょう。男性が選ぶ色としては珍しかったかもしれませんが、街中で自分の車を見つけやすいという実用的なメリットもありました。

友人や同僚からは「意外な選択だね」と言われることもありましたが、この色のチョイスは私にとっては大正解でした。朝の光や夕暮れの中で見るピンクメタリックの輝きは、日常の足であっても所有する喜びを感じさせてくれました。

都市生活における実用性

ヴィッツとの4年間は、主に都市部での生活において、その実用性を存分に体験した期間でした。全長3.6メートルほどのコンパクトなボディは、東京の狭い道や混雑した駐車場でも難なく取り回すことができました。特に立体駐車場での出し入れや縦列駐車の場面では、その小回りの良さが本当に助かりました。

ハイシート化されたデザインは、乗り降りの際の負担を軽減してくれました。現在では多くの車種で採用されているこの設計ですが、当時としては先進的なアプローチでした。また、高い視点からの運転は、都会の複雑な交通状況を把握するのにも役立ちました。

燃費も当時としては優れており、街乗り中心の使用でもリッター当たり15キロメートル以上を記録していました。現在のハイブリッド車には及びませんが、経済性においても満足できるものでした。

実用性の中の発見

ミニマルかつわかりやすい操作性抜群のコックピット

ヴィッツで特に印象に残っているのは、そのパッケージングの妙でした。外観のコンパクトさからは想像できないほどの室内空間は、まさに「小さく見えて大きい」という言葉がぴったりでした。後部座席を倒せば、意外なほどの荷物を積むことができ、引っ越しの際にも大活躍しました。

また、運転席周りの収納スペースの多さも日常使いでは重宝しました。ドリンクホルダーやグローブボックス、ドアポケットなど、細かな配慮が感じられる設計は、長く使うほどにその価値を実感するものでした。

当時はまだカーナビゲーションが一般的ではなかった時代で、私のヴィッツにも標準装備はありませんでしたが、後にポータブルタイプのナビを取り付けて使用していました。スマートフォンが普及した現在からは想像しにくいかもしれませんが、その頃はまだ紙の地図を助手席に広げて運転することも珍しくなかったのです。

「スニーカー」のようなクルマ

私はいつしかヴィッツのことを「スニーカーのような車」と表現するようになりました。履き心地が良く、どこへでも気軽に出かけられる靴のように、この車は私の日常の足として完璧な存在でした。

ただ、先に乗っていたスポーツカーのような感動や高揚感を与えてくれる車ではなかったのも事実です。走りの楽しさよりも実用性を優先した選択でしたから、それは当然のことだったのでしょう。

ドライブの目的地を覚えていても、そこに至る道中の記憶があまり残っていないことが多いヴィッツ。それは逆に言えば、運転に気を遣うことなく、目的に集中できる車だったということかもしれません。現代の移動手段に求められる「ストレスフリー」という価値を、当時既に体現していた車だったと思います。

インターネット時代の中古車売買

2003年、次の車への乗り換えを検討した際、私は前回のロードスター同様、ヤフーオークションでの売却を選びました。当時はまだインターネットでの中古車取引が一般的ではない時代でしたが、直接次のオーナーとやり取りできる点に魅力を感じていました。

オークションでの取引経験があったこともあり、今回は比較的スムーズに進みました。最終的には九州在住の若い女性が落札し、「同じピンク色に惹かれた」と言ってくれたことがとても印象的でした。私が選んだ色が、次のオーナーの心にも響いたことは嬉しい偶然でした。

ロードスターのときほどの寂しさはなかったものの、4年間共にした相棒との別れは一抹の寂しさを感じるものでした。特に、最後に洗車した際、細部までピカピカに磨き上げながら、この車との日々を振り返ったことを覚えています。

おわりに

ヴィッツとの4年間は、自動車に対する私の価値観を広げてくれました。それまで「走る楽しさ」を重視していた私に、「生活の中の実用性」という新たな視点を与えてくれたのです。

クルマは時に感動を与えてくれる特別な存在であると同時に、日常を支える道具でもあります。その二面性を理解することで、私のカーライフはより豊かなものになったように思います。

特別な思い出は少なくとも、毎日の生活を支えてくれたヴィッツには、スポーツカーとはまた違った感謝の気持ちを抱いています。たとえ印象は薄くとも、確かな存在感を持って私の人生の一ページを飾ってくれました。


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