こんにちは、畑岡です。
前回はポルシェ718ボクスターSというオープンスポーツカーについてお話ししました。今回は、マクラーレンブランドとの二台目の出会いとなった570Sスパイダーについて綴りたいと思います。
再びのマクラーレン
540Cを所有した経験は私にとって非常に良いものでした。特に購入価格とほぼ同額で売却できたという驚きの経済性と、サーキット走行という新たな世界への扉を開いてくれたことから、マクラーレンというブランドに強く惹かれるようになりました。
そして2020年、より高性能な570Sスパイダーへと乗り換えることを決断。オープンエアでのドライブも楽しめる上位モデルへのステップアップは、私の車遍歴における新たな挑戦でもありました。
570Sスパイダーは、3.8リッターV8ツインターボエンジンを搭載し、最高出力570馬力を発揮します。0-100km/h加速はわずか3.2秒という圧倒的な性能を持ちながらも、日常的な使い勝手も考慮された、マクラーレンのスポーツシリーズの旗艦モデルです。
カーボンシャシーの恩恵
マクラーレンの大きな特徴の一つが、F1レースで培われた技術を活かしたカーボンファイバー製モノコックシャシーです。この非常に軽量かつ剛性の高いシャシーに、しなやかで良く動くサスペンションが組み合わされることで、相反するふたつの特性が実現されていました。
それは「スポーツカーとしての優れた操縦性」と「長距離ドライブでも疲れない乗り心地」です。通常、高性能なスポーツカーは硬めのサスペンションセッティングにより、路面からの衝撃が直接伝わってくるものですが、570Sスパイダーは違いました。カーボンシャシーにより必要十分な剛性が確保されているため、サスペンションをしなやかに動かすセッティングが可能となり、その結果として驚くほど快適な乗り心地を実現していたのです。
特に印象的だったのは、高速道路の継ぎ目やわずかな段差を乗り越える際の衝撃の少なさです。スーパーカーでありながら、長距離ドライブでも疲労感が少ないという特性は、この車
の大きな魅力でした。
ツーリングマシンとしての活躍
570Sスパイダーの快適な乗り心地と信頼性の高さは、私に積極的なロングドライブの機会をもたらしてくれました。所有期間中にはいくつかの印象的な遠出がありましたが、特に記憶に残っているのは北海道一周のドライブです。
雄大な景色が広がる北海道の道を、オープンエアで駆け抜ける体験は格別でした。山々の緑、広大な平野、そして澄んだ青空。これらすべてを五感で感じながら走ることができるのは、オープンカーならではの魅力です。特に爽やかな風を感じながらのドライブは、北海道の自然をより深く体感できる貴重な経験となりました。
また、東京から日帰りで軽井沢や箱根へのドライブも頻繁に楽しみました。一日300キロメートル以上の走行でも、疲労感が少なく快適に過ごせるのは、この車の優れた特性のおかげです。朝早く出発して、目的地で過ごす時間を十分に確保した後、夕方には帰宅するというスタイルは、休日の過ごし方として理想的でした。
都市とスーパーカー
都内での使用においても、570Sスパイダーは意外な適応力を見せてくれました。特に夜の都内ドライブは印象的で、オープン状態で眺める夜景は通常の視点とは全く異なる体験をもたらしてくれました。
東京タワーやレインボーブリッジなど、象徴的なスポットを巡るナイトドライブでは、オープンカーならではの開放感と高い視点が相まって、まるで映画の一場面のような非日常的な時間を過ごすことができました。冷えた夜風を感じながら輝く街の明かりの中を走る感覚は、都会ならではの優雅な楽しみ方だったと思います。
市街地での取り回しについても、マクラーレン特有の良好な視界と操作性により、想像以上に扱いやすいものでした。低速時のステアリングの軽さや、駐車時のドア開閉(ディヘドラルドア)のスペースの少なさなど、日常使用を想定した配慮が随所に感じられました。
スーパーカーの新たな可能性
570Sスパイダーとの時間で最も印象的だったのは、「スーパーカーは特別な日だけのもの」という固定観念が崩れたことです。確かに圧倒的な性能と存在感を持つ特別な車ではありますが、それは日常から切り離された存在である必要はないのだと実感しました。
良い天気の日には近場へのドライブを楽しみ、週末には少し遠出をし、時には長期休暇を利用して大旅行に出かける。そんな様々なシーンでパートナーとなってくれる万能性は、現代のスーパーカーの進化を象徴しているように思います。
特にマクラーレンは、レーシングDNAを持ちながらも、実用性と快適性を両立させるという難しい課題に挑戦し続けているブランドです。570Sスパイダーはその哲学を体現した一台であり、「公道を走るレーシングカー」という枠を超えて、「日常を特別にするスーパーカー」という新たな価値を提供してくれました。
おわりに
マクラーレン570Sスパイダーとの約1年間は、私のスーパーカーとの付き合い方に新たな視点をもたらしてくれました。高い性能と日常的な使いやすさの両立、そして長距離ドライブの楽しさを再認識させてくれた大切な一台です。
ポルシェ718ボクスターSと比較すると、570Sスパイダーはより「特別感」のある体験を提供してくれる一方で、日常使いの便利さではやや劣る面もありました。しかしその「特別感」は、時に日常から離れた非日常的な体験を求める心を満たしてくれるものでした。
これからも様々な車との出会いがあるでしょうが、マクラーレン570Sスパイダーとの思い出は、私の車遍歴の中で特別な輝きを放ち続けることでしょう。
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