私と車の物語:PORSCHE 718CAYMAN GTS4.0(2023-2024)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

こんにちは、畑岡です。

前回はマツダ・ロードスター(ND型)について語りました。今回は、ケイマンシリーズの集大成とも言える一台、ポルシェ718ケイマンGTS4.0との関係について綴りたいと思います。

自然吸気6気筒への希求

718シリーズが4気筒ターボエンジンに切り替わって以降、多くのポルシェファンが自然吸気フラット6エンジンを惜しむ声を上げていました。私もその一人であり、GT4やGTS4.0といったバリエーションでのみ提供される6気筒エンジンを体験したいという思いから、2023年にGTS4.0を新車でオーダーすることを決断しました。

車体色はポルシェの象徴的なカラーであるレーシングイエローを選択。内装は黒をベースに、ステッチを黄色で統一することで、内外装の一体感を演出しました。また、よりピュアなドライビング体験を求めて、左ハンドルの6速マニュアルトランスミッションという組み合わせを選びました。これは、かつて所有したボクスターのエクスクルーシブエディション以来、実に20年ぶりの左ハンドルMT車となりました。

評価と現実

718ケイマンGTS4.0は、自動車専門誌などで非常に高い評価を受けており、「世界のスポーツカートップ10」に入るほどの実力を持つモデルとされています。その評判通り、実際の走行性能は素晴らしいものでした。4.0リッター自然吸気水平対向6気筒エンジンは、最高出力400馬力を発揮。0-100km/h加速は4.5秒を切る性能を持ちながらも、その魅力は数値だけでは語れない官能的なエンジンキャラクターにありました。

特に印象的だったのは、エンジンフィールの滑らかさです。低回転域からのトルク感、中回転域での伸びやかさ、そして高回転域に至るまでのリニアな加速感。このヒュンヒュンと回り続けるエンジンを6速マニュアルで操る感覚は、他の車では味わえない特別なものでした。

シャシーとサスペンションも絶妙にセッティングされており、コーナリング時の安定感と俊敏性のバランスは、まさに理想的なミッドシップスポーツカーの姿を体現していました。

完成度の高さがもたらす矛盾

しかし、この718ケイマンGTS4.0との関係には、ある種の矛盾も感じていました。それは「完成されすぎている」という感覚です。

高い完成度はもちろん素晴らしいことなのですが、時に「挑戦しがいのなさ」を感じることもありました。すべてが洗練され、予測可能で、安定している。それは素晴らしい特性であると同時に、ドライバーとして「もう少し荒さがあっても良いのでは」と思う瞬間もあったのです。

この感覚は非常に個人的なものであり、また矛盾を含んでいることも自覚しています。あるときは完璧な性能に感動し、またあるときは「何かが足りない」と感じる。この複雑な心境は、私自身の環境や気分によるものなのか、それとも本当に車の特性によるものなのか、今でも明確な答えは持ち合わせていません。

短い別れ

結局、私はこの718ケイマンGTS4.0を所有して約1年、走行距離もそれほど伸びないうちに手放すことになりました。会社の業績悪化という外的要因もありましたが、心の中ではこの「何かが足りない」という感覚も、決断に影響していたのかもしれません。

それでも、このケイマンGTS4.0が素晴らしい車であることに変わりはありません。むしろ、客観的に見れば私がこれまで所有した車の中でも最高峰に位置する一台です。ただ、車との関係は時に理屈では説明できない感情的なものも含まれているのだと、この経験を通じて感じました。

最高の車の一つ、しかし…

振り返ると、718ケイマンGTS4.0は間違いなく「最高の車の一つ」でした。技術的な完成度、走行性能、エンジン特性、どれをとっても非の打ち所がありません。それでも何かが足りないと感じてしまったのは、おそらく私自身の期待値の高さや、過去の経験との比較が影響しているのでしょう。

また、時に「完璧すぎる」ことが、逆に挑戦や発見の余地を少なくしてしまうという逆説も感じました。完璧に設計されたスポーツカーは、ドライバーの技量を補い、最大限のパフォーマンスを引き出してくれる一方で、「ドライバーとして成長する余地」が少なくなるという側面もあるのかもしれません。

あるいは、これは単に私の環境や状況、その時々の気分によるものなのかもしれません。同じ車でも、異なる時期や場所で所有していれば、また違った感想を抱いていたかもしれないのです。

おわりに

ポルシェ718ケイマンGTS4.0との短い時間は、私に「完璧さ」の意味を考えさせる機会となりました。スペックや性能だけでは測れない、車との関係の複雑さと深さを実感した経験でもあります。

この車が足りないものを持っていたのではなく、むしろ私自身の中に何か明確になっていない期待があったのかもしれません。それでも、自然吸気水平対向6気筒エンジンの滑らかさと官能性は、間違いなく私の記憶に深く刻まれています。

車との関係は時に不思議なもので、論理では説明できない感情的な側面を持っています。それこそが、一人の車好きとしての私の価値観を形作る重要な要素なのだと、改めて感じさせてくれる一台でした。

次回も、私の車遍歴の中から印象深い一台についてお話ししたいと思います。

それではまた。


【この車のカタログスペックはコチラ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加