
こんにちは、畑岡です。
前回はポルシェ・マカンGTSという万能選手について語りました。今回は、大きな期待を抱いて新車でオーダーした718ケイマンGT4について、その期待と現実の狭間での体験を綴りたいと思います。
高まる期待
過去に所有していた初代ケイマンGT4が、私の車遍歴の中でも特に印象に残る素晴らしい車だったことは、以前のブログでもお伝えしました。そのピュアなドライビングフィール、機械的な正確さ、そして何より心を震わせるエンジン特性は、いつまでも忘れられないものとなっていました。
そんな経験から、新型の718ケイマンGT4が発表された際は、「先代の素晴らしさをさらに進化させた車になるに違いない」という強い期待を抱き、迷うことなく新車でオーダーを決断しました。カスタマイズには特にこだわり、外装の鮮やかな黄色(レーシングイエロー)に合わせて、内装のステッチにも同色を指定。シートベルトやメーターパネルの針にも黄色を採用し、内外装の統一感を高めた自分だけの特別な一台を作り上げました。
オーダーから納車までの期間は、まるで子供がクリスマスプレゼントを待つような気持ちで過ごしました。ポルシェから送られてくる製造工程の写真や進捗報告を見るたびに、胸が高鳴ったものです。
期待と現実の狭間で
待ちに待った納車の日。艶やかな黄色のボディが輝く718ケイマンGT4との対面は、確かに特別な瞬間でした。外観は期待通り、いやそれ以上に美しく、内装の統一感も満足のいくものでした。特に先代から進化したエアロダイナミクスや、専用設計のサスペンション、そして最大の魅力である4.0リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンに、大きな期待を寄せていました。
しかし、実際に乗り始めると、なんとも言えない違和感を覚えるようになったのです。特にエンジンフィールに関して、先代GT4とは明らかに異なる特性がありました。確かにスペック上はパワーアップし、排気量も増えていましたが、エンジンの「キャラクター」が変わってしまったように感じたのです。
先代GT4の心臓部が放つ生き生きとした鼓動感や、高回転まで気持ちよく回り切る官能的な特性が、新型ではやや希薄になっていました。これは単なる慣れの問題か、あるいは私の個体特有の現象なのかと思い悩みましたが、自動車評論家の方々や他のオーナーのレビューを読むうちに、同様の感想を持つ方が少なくないことを知りました。
ポルシェでは珍しい「期待はずれ」
ポルシェという自動車メーカーは、世代を重ねるごとに着実な進化を遂げることで知られています。911シリーズを見ても、基本コンセプトを守りながらも時代に合わせて磨き上げ、常に「より良い車」へと進化させてきました。そんなポルシェにとって、「先代に劣る」という評価は極めて珍しいものです。
もちろん、718ケイマンGT4は客観的に見れば素晴らしい車であることに変わりはありません。シャシーの剛性感やハンドリングの正確さ、ブレーキの効きなど、多くの面で進化を遂げていることは間違いありません。しかし、スポーツカーの「心臓」とも言えるエンジン特性が、私の期待とは異なる方向に変化してしまったことは、大きな disappointment でした。
技術的な観点からすると、排ガス規制の強化などによる制約が厳しくなる中で、自然吸気エンジンの特性を維持することが困難になっていることは理解できます。それでも、ポルシェのようなブランドであれば、その制約の中でも「感動」を生み出す方法を見つけ出してくれるだろうという期待があっただけに、残念に感じてしまったのです。
短い別れ
結局、私は718ケイマンGT4を1年も満たないうちに手放すという決断をしました。これは私の車遍歴の中でも、最も短い所有期間となりました。
決して「悪い車」だったわけではありません。むしろ、多くの自動車メーカーが羨むほどの高性能スポーツカーであることは間違いありません。しかし、「先代を超えることができなかった」という点に、私は大きな失望を感じてしまったのです。
特に、先代GT4の素晴らしさを知っていただけに、その比較が余計に厳しくなってしまったのかもしれません。未知の車であれば、おそらく満足していたかもしれないと思うと、複雑な気持ちになります。
教訓として
この経験から私が学んだことは、「期待値のマネジメント」の重要性です。あまりにも強い期待を抱きすぎると、現実とのギャップに失望してしまうことがあります。また、「進化」が必ずしも自分の好みに合致するとは限らないという事実も、改めて実感しました。
自動車産業は、技術の進化と同時に、排ガス規制や安全基準など様々な制約との戦いでもあります。その中で「ドライバーの感性を満足させる車作り」を続けることの難しさを、メーカー側の視点からも考えさせられました。
一方で、この経験は私の車選びにおいて貴重な指針ともなりました。スペックや外観だけでなく、「自分が本当に重視する要素は何か」を改めて考える機会となったのです。私にとっては、エンジンの「キャラクター」や「フィーリング」が、他のどんな要素よりも重要だということを、再認識する機会となりました。
おわりに
ポルシェ718ケイマンGT4との短い時間は、私の車遍歴において「期待と現実の狭間」を象徴する経験となりました。それでも、この体験が私の車に対する理解をさらに深めてくれたことは確かです。
「進化」とは必ずしも「より良くなる」ことだけを意味するのではなく、時に「変化」でもあるのだということ。そして、その変化が自分の好みに合致するとは限らないという当たり前の事実を、改めて心に刻み込む機会となりました。
この経験を糧に、これからも様々な車との出会いを楽しみ、それぞれの個性や魅力を偏見なく受け入れていきたいと思います。次回も、私の車遍歴の中から印象深い一台についてお話ししたいと思います。
それではまた。
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